【矢掛のものづくりを訪ねて】
大地が育んだ美しさを未来へ。井上石材有限会社
矢掛町には、地域の歴史や文化を支えてきた産業が数多くあります。
その中でも、古くから人々の暮らしと深く関わってきたのが「石」。
今回訪れたのは、矢掛町内田にある井上石材有限会社です。
採石から加工、施工までを一貫して手掛け、矢掛の大地から生まれる石の魅力を全国へ届け続けています。
矢掛の山が生み出す「白桜みかげ」

取材で案内していただいた採石場には、雄大な「白桜みかげ」の岩肌が広がっていました。
その景色を眺めながら、社長が静かに話してくださった言葉があります。
「石は大きければ大きいほど美しい。」
自然が何千万年もの歳月をかけて育んだ一枚岩には、人の手では決して生み出せない迫力と存在感があります。
井上石材有限会社が採掘する「白桜みかげ」は、かつて「矢掛石の白」と呼ばれていた花崗岩を独自にブランド化したもの。
やさしい色合いと上品な表情を持ち、墓石や建築資材、土木資材、庭園資材など幅広い用途で利用されています。
石は採れれば製品になるわけではない
採石場から切り出された石は、そのまま製品になるわけではありません。

加工を進める中で、わずかな傷やヒビが見つかれば製品として使うことはできず、品質基準を満たしたものだけが商品となります。
驚いたのは、その歩留まりです。
切り出された石のうち、実際に製品として使われるのはわずか3%ほどだそうです。
これは日本の石材に求められる品質基準が非常に高いため。
少しでも傷があれば使わないという徹底した品質へのこだわりが、日本の石材文化を支えています。
一つの墓石や石材製品の裏には、それだけ多くの石が選び抜かれていることを知りました。
採石から加工まで、一貫して手掛ける強み
近年では採石と加工を別々の会社が担うケースも少なくありません。
しかし井上石材有限会社では、採石・加工・施工、さらには輸出入までを自社で一貫して行っています。
石を採るところから完成品になるまでを知り尽くしているからこそ、それぞれの石が持つ特徴を見極め、お客様の要望に合わせた最適な提案ができます。
長年培われてきた技術と経験が、地域のものづくりを支えています。
「石の底ヂカラ」を伝えたい
同社のホームページには、「石の底ヂカラ」という印象的な言葉が掲げられています。
石は、人類が最初に扱った素材ともいわれています。
便利さや効率が求められる時代だからこそ、自然素材だからこそ持つ美しさや力強さを伝えたい。
そんな想いが込められています。
取材では、石も永遠ではないことを教えていただきました。

長い年月を経ると、石は少しずつ風化し、やがて**真砂土(まさど)**へと姿を変えていきます。
山から生まれた石が土へ還り、また自然の一部となっていく。
そんな壮大な時間の流れを知ると、一つの石がより特別な存在に感じられました。
石材会社だからこそ生まれた新しい挑戦
井上石材有限会社の挑戦は、石材だけにとどまりません。
近年では、Bean to Barチョコレート向けの石臼製品「ショコラミル」を開発・販売。

長年培った石材加工技術を新しい分野へ活かし、石の可能性を広げています。
伝統を守りながら、新たな価値を生み出していく姿勢も同社ならではの魅力です。
編集後記

今回の取材で印象に残ったのは、「石は大きければ大きいほど美しい」という社長の言葉でした。
何千万年という時間をかけて生まれた石も、長い年月の中ではやがて真砂土へと姿を変えていきます。
人の一生では想像もできないほど長い時間の中で育まれた石だからこそ、その美しさや価値には特別な重みがあるのだと感じました。
普段何気なく目にしている石ですが、その一つひとつには自然の歴史と職人の技術、そして品質への徹底したこだわりが詰まっています。
矢掛の大地が育んだ「石の底ヂカラ」を、これからも多くの人に知ってほしいと思える取材となりました。
文:HIROKAZU(矢掛journal)
写真:KIYOE(矢掛journal)
矢掛 journal